初心者がLinuxを使い始める環境が整ったと思う7つの理由
2025-01-14
今回は「初心者がLinuxを使い始める環境が整ったと思う7つの理由」というテーマで日頃思っていることを書いてみたいと思います。もし今からLinuxに興味を持っているけど躊躇っているという人がいたらぜひ読んで欲しいと思います。ようこそLinuxディストリビューションの世界へ。
ドライバーレス印刷の普及でLinuxから使えるプリンターが増えた
スマートフォンからネットワーク越しにプリントアウトすることが一般的になったことで多くのプリンターがドライバーレス印刷に対応しています。これはLinuxユーザーにとっても非常にありがたい状況が生まれたと考えています。ドライバーレス印刷が普及する前は各メーカーが機種ごとに提供しているLinux用のドライバーをダウンロードしてインストールすることでプリンターと接続していました。メーカーがドライバーを用意していないプリンターでは印刷できないため、LinuxユーザーはLinuxドライバーを提供しているプリンターを調べて購入する状況でした。「プリンターはLinuxの鬼門」などと言われていましたが、その状況がドライバーレス印刷の普及によって大きく変わったのです。
ドライバーレス印刷に対応したプリンターはOpenPrintingで探すことができます。
Flatpakなどの新たなパッケージ管理が増えた
ほとんどのLinuxディストリビューションではアプリケーションのインストールや削除はパッケージマネージャーと呼ばれる管理ツールで行います。リポジトリと呼ばれるオンライン上のアプリ置き場からパッケージマネージャーがアプリケーションを取得しインストールするのが、これまでのLinuxユーザーの一般的なパッケージ管理でした。もちろん、今でもこの方法はメジャーなのですが、それに加えてFlatpakやSnaps, AppImageなどの仮想化技術を利用した、どのディストリビューションからでも利用可能な新しいアプリケーションの提供方法が普及しました。FlatpakもSnapsも登場から時間を経て徐々にLinuxユーザーに浸透してきたと感じています。この新たなパッケージ管理方法の登場により、公式リポジトリになかったアプリケーションでもFlatpakから簡単に取得し使うことができるようになったのです。また、Flatpak, Snaps, AppImageはアプリケーションのインストールや削除によって元のシステムに影響を与えないため、気軽にインストールや削除ができるというメリットがあります。この状況はLinux初心者にとっても非常に喜ばしいことだと考えています。
flatpak, Snaps, AppImageでどのようなアプリケーションが使えるようになるのか興味のある方は以下のリンクをご覧ください。それぞれ有名なリポジトリやサイトのURLを掲載しておきます。
- Flathub: flatpakでデファクトスタンダードとなっているリポジトリ
- Snapcraft: Canonical社が運営する公式リポジトリ
- AppImageHub: AppImageを集めたストアサイト
日本語環境を整えるのが簡単になった
これは日本人だけに特化した話ですが、多くの日本人にとってシステムが日本語化されているか、日本語入力ができるか?という問題は非常に大きいと思います。現在はLinuxディストリビューションも多言語化が進み、インストールした直後から日本語化が完了しているディストリビューションもあり、Ubuntuなどを使えばその点の不安はかなり払拭できると思います。また、日本語化されていないディストリビューションについても日本語化はかなり簡単に行えるようになっています。日本語入力に関してはディストリビューションごとに用意されているパッケージにはかなり差があるのですが、前述のflatpakを利用すればディストリビューションによらず、いつも同じ日本語入力を使用することも簡単にできるようになりました。
インストールが簡単になった
前述の日本語化の話とも関連しますが、最近のLinuxはインストールがとにかく簡単なディストリビューションが多いです。ディストリビューションという言葉が分からないという方はLinuxを用いたOSの種類というぐらいザックリの理解で大丈夫です。Linuxディストリビューションの中には日本語でインストールできるものも多くあります。黒い画面にコマンドを打ちながらインストール作業をするなんてディストリビューションの方が今は珍しいぐらいです。ハードウェアの検出やドライバやファームウェアも自動でインストールされます。きれいなグラフィック画面でマウス操作で質問に答えていけばあっという間にインストールができる。それが今のLinuxのインストールです。もし、過去にインストールに挫折してしまった方も諦めずに再チャレンジして欲しいと思います。
筆者のブログでも初心者向けのディストリビューションをいくつか紹介しています。詳しくは2024年版 初心者にオススメのLinuxディストリビューション 4選を参考にしてみてください。
WEBアプリケーションでできることが増えた
スマートフォンの普及の後押しもあり、WEBブラウザがまるでOSのような役割りを果たしWEBアプリが非常に充実している世の中になりました。WindowsユーザーでもMacOSユーザーでもLinuxユーザーでもOSに関わらずWEBアプリを使用すれば同じ体験をできるという非常に素晴らしい時代になりました。文書作成、表計算、音楽鑑賞、動画鑑賞あらゆることがWebアプリやWebサービスを通じて行うことができるようになっています。多くの人がWindowsを使い続ける理由としてMicrosorft Officeを使う必要性を挙げます。たしかにLibreOfficeでは完全にMicrosorft Officeの代わりにならないことは認めます。しかし、もしWebアプリのMicrosoft 365 for the webでも対応可能な作業なのであれば、もやはWindowsである必要はありません。
Linuxディストリビューション間の差が少なくなってきた
これは前述のFlatpakやSpapsなどの新たなパッケージ管理方法の話とも関連するのですが、最近、メジャーなLinuxディストリビューションは中核をなすシステムにSystemdを採用しているため、従来に比べて操作性や設定の差が減ってきています。Systemdが採用されたディストリビューションではシステムの根幹に関わる設定のコマンドは統一されており、従来ディストリビューションごとにバラバラだったコマンド郡にも差がなくなっています。これは筆者のようなディストリビューションマニアには悲しい話ですが、新たにLinuxを使い始める人にとっては嬉しい話だと思います。RedHat系を使ってもDebian系を使っても共通したコマンドでシステムの情報を取得し、設定ができるというのは心理的安全も確保されますし、ディストリビューションごとに新たなコマンドを覚える煩雑さがなくなります。
UEFIマシンが多数派になってきた
PCの電源を入れた時に最初に起動するマザーボード搭載のプログラムがBIOS(Basic Input Output System)なのですが、現在使われているほとんどのPCが旧型のLegacy BIOSか新型のUEFI BIOSです。UEFI BIOSも登場からしばらく経ち、現在ではUEFI BIOSを搭載したマシンが増えました。このこととLinuxに何の関係があるかというと、Linuxをインストールする際にLegacy BIOSなのかUEFI BIOSなのかでハードディスクのパーティショニングやOSを起動するブートローダーのインストール先が異なるなど対応を変えないといけない点があります。もちろん、これらは優秀なインストーラが自動で判定してくれるのでユーザーが判断に悩むことは実際上は少ないのですが、UEFIマシンが多数派になったことで、Legacy BIOSとUEFI BIOSが混在していた時期に比べ、より単純化されたと言えます。ただし、古いPCを再利用したいという目的の場合はLegacy BIOSの可能性がありますので、ご注意を。
おわりに
Linuxを使い始めるのを悩んでいる方の背中を押すための理由を7つ挙げてみました。記事を執筆していて思ったのですが、筆者がLinuxを使い始めた頃に比べると非常に好条件が揃っているんだなと改めて思いました。特にプリンターとWEBアプリに関してはスマートフォンによって状況が大きく変化しています。「Linuxだからできない」という状況がだんだん変わってきています。
WEBブラウザとWEBアプリの登場がOS間の差をなくしたように、仮想化技術とSystemdがLinuxディストリビューションの差もなくそうとしています。差がなくなり統一されるというのはユーザーには利便性が向上するメリットがある一方で、それは多様性を失いコモディティ化することでもあります。初心者にLinuxをお勧めしやすくなったのは喜ばしいですが、一方で、少し寂しく感じている部分もあります。