2024年版 初心者にオススメのLinuxディストリビューション 4選

Linuxに初めて触れる方へ

Linuxを使ってみませんか?

多くの方にとってパソコン(PC)と、その中のシステム(OS)は一体のもので、分けて考えたこともなかったかも知れません。家電屋さんではPCにWindowsが入った状態で売られているのが当たり前ですし、MacユーザーもMacOSが予め入った状態で購入することが当たり前です。しかし実はPCのOS(Operation System)は自由に入れ替え可能です。今回紹介するLinuxも数あるOSの一つです。

Linux単体でインストールすることはとても稀なのでLinuxディストリビューションというLinux(カーネル)と周辺のソフトウェアを抱き合わせた形で配布されています。そしてLinuxディストリビューションは様々な団体から有償/無償で配布されており、私達は自由に選び使うことが出来ます。Linuxディストリビューションは膨大な数があるため、初心者が適切なものを選ぶのは大変です。この記事では初めてLinuxに触れる方でも普段使いのPCとして使えるディストリビューションを選んでみました。本記事が皆様のLinuxライフのきっかけになれば大変光栄です。

Linuxはエキスパートや愛好家だけのものではない

もしLinuxってシステムの専門家やプログラマーが使う黒い画面にコマンド打ち込むやつでしょ?ともしお思いの方がいたら、そういう方にこそぜひこの記事を読み、実際にLinuxに触れて欲しいです。Linux(正確にはLinuxディストリビューション)は今やシステムのエキスパートやPC愛好家だけのものではなく普段遣いのPCに気軽に入れられるものになっています。LinuxではWindowsやMacでできる多くのことが出来ます。Webサーフィン、ドキュメント作成、動画や音楽鑑賞、アート作品の製作、DTM…他にも多くのことをできる環境が整っています。

Linuxは有償OSの劣化版?

よくLinuxを紹介するサイト等で無料で使えることを前面に押し出して「無料で使えるOS」と宣伝しているものを見かけますが、Linuxは無料という安直なイメージが固定されることを私は懸念しています。無料で使えるものは確かに多くありますが、それはLinux(および他のソフトウェア)が「フリー(自由)」なライセンスで配布されていることの結果でしかありません。実際、企業が事業向けに稼働させさせているエンタープライズ向けLinuxディストリビューションは有償です。Linuxは「無料で使える有料のOSに劣るシステム」では決してなく、自由であるがゆえに世界中の開発者が開発に参加でき、有償でも無料でも配布することも可能なOS であることは心に留めておいていただきたいです。

ディストリビューションの選定基準

初心者向けのディストリビューションを選定するということで以下の点に配慮しました。システムには特にくわしくないけれどWindowsからLinuxに移行したいという方、ちょっとLinuxに興味があって触ってみたいという方のために極力設定が不要で初期設定で使えるものを選定しました。

  • インストールが簡単なこと
  • 設定不要で日本語表示できること
  • 設定不要で日本語入力できること
  • ソフトウェアのインストールがGUIでできること
  • システムの設定がGUI操作でできること
  • システムアップデートがGUIでできること
  • 入手が無料であり簡単であること

Ubuntu

パッケージの形式 DEB
パッケージ管理 APT
標準のデスクトップ環境 カスタマイズされたGNOME
公式フレーバーが用意されている
リリース方式 固定リリース
Table 1. Ubuntu

Ubuntuは「誰にでも使いやすい最新かつ安定したシステムを提供する」ことを目標に開発されているディストリビューションです。Debianから派生する形で作られMark Shuttleworth氏が立ち上げたCanonical社から支援を受けて開発を行っています。尚、Ubuntuは独自にパッケージを構成しておりDebianパッケージとの間にバイナリ互換性はありません。

インストール直後からオールインワンの環境が整い、システムに詳しくない人間でも手軽に扱えるデスクトップ環境が整っていることからUbuntuはリリースされると一躍注目を集めデスクトップ用途でシェアを伸ばしました。今日、Debian系のディストリビューションが非常に多いのはUubntuの影響と言っても過言では無いと思います。Ubuntu自体も多くの派生を生み、Debian/Ubuntu派生と呼ばれることも珍しくなくなりました。

筆者としては「Linuxを使ってみたいけど何がいいか分からない」という初心者にはUbuntuをオススメします。日本語の部分を考慮しなければ他にもオススメしたいディストリビューションはたくさんあるのですが、日本語環境を考慮し、かつ日本語での情報がネット上に多いディストリビューションとなるとUbuntuの右に出るものは今のところないかなというのが正直なところです。もしLinuxに興味があるけど、ちょっと不安な方はUbuntuをインストールしてみてください。きっと気にいると思います。

Linux Mint

パッケージの形式 DEB
パッケージ管理 APT
標準のデスクトップ環境 Cinnamon, MATE, Xfce
リリース方式 固定リリース
Table 2. Linux Mint

Linux Mintはより使いやすくモダンで洗練された環境をユーザーに提供することを目指してUbuntuから派生したディストリビューションです。今日ではUbuntuベースとDebianベース(LMDE: Linux Mint Debian Edition)の二種類が存在します。特にこだわりがなければUbuntuベース(通常版)をオススメします。マルチメディアへの対応もなされており、「箱から出したらすぐに使える」を謳っています。Ubuntuにはない独自のMint Toolを搭載し設定やシステムの更新を簡単にできるように工夫がされています。

Linux Mintのプロジェクトはデスクトップ環境にこだわりCinnamon, MATEのデスクトップ環境を生み出しました。その洗練された作りはWindowsに馴染みのあるユーザーにも納得の作りだと思います。Linux MintにもUbuntu同様日本語で質問ができるフォーラムがありますので、初心者の方も情報が取りやすいかと思います。ただ、バージョン間でのアップグレードの際のトラブルも皆無ではないため、もしUbuntuと迷ったならUbuntuで慣れてみてからLinux Mintを触ってみるという方法もありだとは思います。

日本語環境に関しては筆者が使った限り、インストール中およびインストール後の日本語表示・入力は問題なく使えています。

筆者の感想ですが、モダンで使いやすいシステムを提供しようとしている意図が伝わってくるプロジェクトだと感じています。一方でUbuntuよりも独自ツールが多い分、トラブルが起きた際にはネットに多く存在するUbuntuの情報のみでは対応が難しく検索スキルが必要になる可能性はあるかと思います。国内でもLinux Mintはファンが多いディストリビューションですので、初心者が初めて触るディストリビューションとして推せると考えています。

Debian

パッケージの形式 DEB
パッケージ管理 APT
標準のデスクトップ環境 GNOME, KDE, Xfce等から選択可
リリース方式 固定リリース
Table 3. Debian

DebianはIan Murdock氏(1973-2015)が始めたDebianプロジェクトから提供されているディストリビューションです。このプロジェクトはDebian社会契約を掲げておりフリー(無料ではなく自由の意味)なソフトウェアで構成されるシステムを提供することを目指しています。30年以上も続くプロジェクトであり現在のIT業界で大きな存在感を保っています。UbuntuもDebianの派生ディストリビューションとして生まれました。かつては実用面よりフリーの原則を重視し保守的かつ厳格な態度を示してきたプロジェクトですが、近年ではインストールメディアにノンフリーなfirmwareを含められるようDebian社会契約を変更するなど柔軟な姿勢が見られます。

Ubuntuと比較すると古く安定的なパッケージで構成されています。それ故に安定感があり堅牢なシステムと言われています。一方でUbuntuがプロプライエタリやノンフリーなパッケージもシステムに含むのに対してDebianは本体には含まないという基本的な方針(サードパーティとしては提供される)のためユーザーの使い勝手という面ではUbuntuには劣る面もあります。

デスクトップ用途のOSという観点で見ると特にマルチメディアの分野ではノンフリーなパッケージの導入が不可欠なため手動でリポジトリの追加を行うなどの手間はかかり、この点はノンフリーやプロプライエタリなパッケージを含むUbuntuに比べると煩わしさを感じる点ではあると思います。

日本語環境に関してはインストール時、およびインストール後も日本語表示・入力は特に問題を感じません。

筆者はDebianの思想はとても好きなのですが、一方で実用面においてはその思想に縛られ不便になっている部分もあると思っています。ブラウザでのネットサーフィンやプログラミングの勉強といった用途でしたら全く問題なく使用できますし、Debianを触ることでフリーとノンフリーなパッケージの違いのようなものも自然と意識することになることは決して損では無いと思っています。かつては初心者には難しいと言われたDebianですが、随分と敷居が下がりました。一回触ってみてはどうでしょうか?

OpenSUSE

パッケージの形式 RPM
パッケージ管理 YaST(yast2) / zypper
標準のデスクトップ環境 GNOME, KDE, Xdce等から選択可
リリース方式 Leap: 固定リリース
Tumbleweed: ローリングリリース
Table 4. OpenSUSE

OpenSUSEはSUSE社の援助を受けたコミュニティと事業者向けのSUSE Linux Enterprise(SLE)の共同で開発されているディストリビューションです。パッケージ形式はRPM方式であり、パッケージ管理ツールはGUIがYaST, コマンドラインがzypperが用意されています。OpenSUSEはヨーロッパ発祥の他のディストリビューション同様にGUIの設定画面に力を入れてきており、OpenSUSEの管理ツールの心臓部であるYaSTはパッケージ管理だけでなくシステム設定をGUIで行えるコントロールセンターとしての役割があります。

日本語についてはかなり親切でインストール時もインストール後も特に日本語で困ることはなく自然に表示・入力が可能です。

OpenSUSEには執筆時現在(2024年2月)では大きく分けてLeapとTumbleweedの2つの種類がリリースされています。Leapは安定したパッケージで構成されており、リリースはバージョンが固定の固定リリース方式です。これに対してTumbleweedは、より新しいパッケージで構成されておりリリースはローリングリリース方式です。筆者としては初心者の方には十分にテストされ安定したパッケージで構成されているLeapを使うことをおすすめします。もし慣れてきてトラブル対応にも自信がついたらTumbleweedに挑戦するのも良いかも知れません。ローリングリリースには固定リリースにはない快適さがあります。

筆者の印象としては割と何でもこなせる器用なディストリビューションだと思っています。普段使いのデスクトップ用途としても開発マシンやプログラミングの勉強用としても使えます。初めての触るLinuxディストリビューションとしてOpenSUSEを選ぶというのはアリだと思っています。

まとめ

ちょっと難しそうだけどLinuxにチャレンジしたい!という方は本記事で紹介したディストリビューションでLinuxに触れてみるのはいかがでしょうか?もし慣れてきてもっと他のディストリビューションにも触れたいという方のために以下の記事も紹介しておきます。

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