Linuxを日常的に使う実験ブログ

最小環境から自分の好みにカスタマイズできるLinuxディストリビューションVoid Linuxを使ってみた

 2024-08-17

 Void Linux

Void Linuxを使ってみませんか?

Void LinuxというLinuxディストリビューションを聞いたことがありますか?最近、筆者はVoid Linuxをメインマシンにインストールして使っています。もしこの記事を読んでいるあなたが「Linux入門としてUbuntuを触ってきたけど他のディストリビューションにも触ってみたい」とか「最小環境から構築できて日常使いに使えるディストリビューション何が良いかな?」と思っているならVoid Linuxを使ってみるのも良いかも知れません。この記事では私がVoid Linuxを使ってみた感想を書いてみたいと思います。

Void Linuxとは

Void Linuxはゼロから設計された独立系のディストリビューションであり、他のディストリビューションをベースにしていません。以下のような特徴を持っています。

  • ローリングリリース
  • XBPSを用いたパッケージ管理
  • initとサービス管理はrunitを採用
  • 最小環境から好みのカスタマイズが可能

ローリングリリースや最小環境からの環境構築という点に関してはArch Linuxと似ている部分があると思います。一方で、Arch Linuxがinit、サービス管理にSystemdを用いるのに対してVoid Linuxではrunitを用いているという点で異なります。以下では少しだけVoid Linuxの特徴を紹介してみたいと思います。

インストールはTUIのインストーラを使用

Void LinuxのインストールはSlackwareやArch Linux, Gentoo Linuxのインストールを経験しているユーザーにとってはさほど難しくはないと思います。一方で「LinuxはUbuntuしか触ったこと無い」という方には少しハードルが高く感じるかもしれません。Void Linuxを最小構成でインストールする場合にはTUIインストーラを用いてインストールしていきます。Xfceのデスクトップ環境が用意されたバージョンもありますが、Void Linuxの最小環境から全てを選択して構築していく醍醐味を味わうためには最小構成でのインストールをおすすめします。

Void LinuxのインストーラはDownload Void Linuxからインストールできます。

インストーラは下図のようなTUI画面で全て英語表示です。日本語表示がないことに不安を感じるかも知れませんが、インストールで行うべきことが頭に入っていれば難しいことは何もありません。基本的にはキー配列の設定、ストレージのパーティショニング、ネットワーク、ホスト名、パスワード、タイムゾーンの設定、ブートローダのインストールなどです。基本的にはインストーラの質問に答えていけばインストールを完了することができます。

installer

最小環境から構築できる独立系ディストリビューション

Void Linuxにはデスクトップ環境がない単純なコンソールのみのbase版とXfceデスクトップ環境がプリインストールされたXfce版があります。Void Linuxでは多くのデスクトップ環境を使用できるので、base版をインストールして自分のやりたい方向性に自由にカスタマイズしていくことができます。インストールしたらすぐ使えることを目指したUbuntuのようなLinuxディストリビューションに慣れている方には少し敷居が高いかも知れませんが、一度このカスタマイズする楽しさを知ってしまうと病みつきになってしまうかも知れません。筆者は個人的には最小環境に自分の使う最低限のパッケージのみを入れてシステムをシンプルに保つことが好きです。

initにはSystemdを使わずrunitを使用

近年、Ubuntu, Debian, Fedora, Arch Linuxなど多くの主要Linuxディストリビューションがinitシステムおよびサービス管理にSystemdを採用しており、最近Linuxを触り始めた方の中にはSystemd以外のinitシステムを触ったことがない方もいるかも知れません。しかしLinuxのinitシステムはSystemd登場以前からあるSysV系のinitやGentooで標準のOpenRC, Slackwareで採用されているBSDスタイルのinitシステムなど多くの種類があります。Void Linuxではrunitというinitシステムを採用しています。

Systemdに慣れているとsystemctlコマンドが使えず最初は戸惑いますが、runitのシンプルな作法を覚えればすぐに慣れて使うことができました。runitでは/etc/sv/以下の各サービスを/var/service/以下にリンクを張ることでサービスを有効化します。サービスの起動、停止、再起動、ステータス表示は以下のコマンドになります。

操作コマンド
起動sv up <service name>
停止sv down <service name>
再起動sv restart <service name>
ステータス表示sv status <service name>

パッケージ管理はXBPSシステム

Void LinuxはXBPS(The X Binary Package System)というスクラッチで開発されたパッケージ管理システムを採用しています。使い勝手はAPTやDNF, Pacmanとあまり変わりません。オンライン上のパッケージの検索、追加、削除、ローカルパッケージの検索、システムの更新などを手軽に行うことができます。パッケージ数はDebianやArch Linuxには及びませんが、主だったパッケージは大抵公式リポジトリにあります。

以下に基本的なXBPSコマンドを記しておきます。尚、インストールや更新などシステムに影響を与える操作はroot権限が必要になります。

操作コマンド
インストールxpbs-install <package name>
オンラインリポジトリの検索xpbs-query -Rs <package name>
パッケージの削除xpbs-remove <package name>
システムの更新xpbs-install -Su

豊富に選べるデスクトップ環境

前述の通り、Xfceが予めプレインストールされたXfce版がありますが、Void Linuxではその他のデスクトップ環境も自由に選ぶことができます。GNOME, KDE, Xfce, LXDE, LXQt, MATEなどの有名どころは揃っていますし、Sway, Labwc, Wayfire等のWaylandコンポジタも充実しています。ぜひお好みのデスクトップ環境を構築してみてください。

筆者がlabwcを導入した経緯はVoid LinuxにLabwcで軽量で実用性の高いWaylandデスクトップ環境を構築するに記事を書いています。参考にしてみてください。画像は筆者がVoid Linux上にlabwcで構築したデスクトップ環境です。

void labwc

日本語環境について

多くのLinuxディストリビューションと同様にマルチ言語に対応しているため、日本語にも対応しています。日本語化についてはlocaleの設定や日本語フォント、日本語入力のための入力メソッドなどのパッケージをインストールし手動で設定する必要があります。GentooやArchで経験があれば、行うべきことの勘所はつかめると思います。UbuntuやFedoraのようにインストール画面から日本語を選択して自動で設定が終わるような手軽さはありませんが、公式リポジトリに必要なパッケージは全て揃っているのでXBPSでインストールをして設定を行えば日本語環境も問題なく揃えることができます。

筆者が日本語環境を構築した際の記事Void Linux + hikari環境に日本語環境を構築するを載せておきます。ご参考まで。

使ってみてどうだった?

Void Linuxの紹介が長くなってしまいましたが、結局使ってみてどうだったのか?という個人的な感想を書いてみます。使い勝手としてはArch Linuxと大差なく使えると思っています。公式リポジトリには筆者が使いたいと思った大抵のパッケージは揃っており、flatpakなどのクロスプラットフォームのパッケージも活用すれば、日常使いのOSとしては十分使い勝手の良いシステムだと思っています。

ここからはArch Linuxとの比較しながらVoid Linuxを見ていきたいと思います。Arch LinuxにはArch wikiとAURというコミュニティーによる強力なバックアップがありますが、Void Linuxにはそこまで豊富なドキュメントはありませんし、AURのようなユーザーが投稿する半公式のリポジトリもありません。ただしABS(Arch Bulid System)に似たソースコードからパッケージをビルドするxbps-srcという仕組みはあり、ライセンスの関係でバイナリで配布できないパッケージに関してはvoid-packagesからビルドすることが可能です。また、日本語でVoid Linuxについて書かれた記事は多くなく、ほとんど英語で探すことになります。日本人ユーザーにとってはこの点はハードルが上がるかも知れません。

まとめ

Void Linuxの概要を簡単に説明しながら、使ってみた感想を書いてみました。ローリングリリースや独自のパッケージ管理ツールをスクラッチで開発したというArch Linuxと似たようなシンプルさを有しながらも、Arch Linuxほど大所帯にならずコンパクトにまとまったディストリビューションという印象でしょうか。もしArch Linuxをお使いで似たような使い勝手で少し変わったディストリビューションを使ってみたい方はVoid Linuxを使ってみてはいかがでしょうか?