みんなが日常的に使えるLinuxディストロ Solusを使ってみた
2024-02-09
2024-02-10
こんにちは。今回のテーマは「みんなが日常的に使えるLinuxディストロ Solusを使ってみた」です。これまで実験的に使ってきたSolusですが本格的にノートPCに導入して使ってみたのでレポートします。今回はLinuxにこれまで触ったことがない方にも分かるよう、なるべく丁寧な説明を心がけたいと思います。
Solusとは
Solusはデスクトップ用途で日常的にLinuxを使う人に向けて作られたLinuxディストリビューションです。創始者Ikey Dohertyが理想のシステムを求めて開発が始まりました。このプロジェクトからBudigeデスクトップやPiSiパッケージマネージャをフォークしたeopkgが生まれました。商業用OSにも劣らないオペレーションシステムを追求した創始者の思いが込められたディストリビューションです。
Solusはパーソナルコンピューターとして使用されることを想定しており、サーバー用途が期待されるLinuxディストリビューションとは趣を異にします。いかにデスクトップ用途として使い勝手が良い環境を提供できるか、安定的かつ新しいシステムを提供できるか、ということに重きを置いています。
Solusデスクトップ画面
日本語環境について
おそらく多くの日本人にとってLinuxを導入する時にハードルとなるのが日本語環境ではないかと思います。英語が得意で画面が英語のままでも困らないという方でもWEBブラウザに日本語入力すらできないとなったら困ると思います。ここでは日本語環境について筆者がSolusを触った感想を正直に書いておきます。
日本語表示は問題ない
日本語の表示については4.5からはインストーラも日本語に対応し、インストール直後から日本語が表示される親切な設計となっています。
日本語入力は手動設定が必要
一方、日本語入力に関してはまだUbuntuのようにインストール直後から不自由なく日本語入力できるというわけではありません。手動で入力環境を整える必要があります。インプットメソッド(IM)の候補としてはIBusとfcitxがあります。尚、この執筆時点(2024-02-08)ではfcitxの後継であるfcitx5はリポジトリにありません。
変換エンジンとしてはibus-mozc, ibus-anthy, fcitx-mozcが選択肢になると思いますが、いずれも手動で設定が必要です。
設定そのものは他のディストリビューションで慣れている方ならばそれほど大変な作業ではありません。しかしWindowsやMacで設定無しで日本語が当たり前に入力できるシステムに慣れている方にとっては「え?ソフトウェアのをインストールしたり設定しないと日本語入力ができないの?」という驚きはあるかと思います。どうしても設定なしで日本語入力したい!という方には残念ですがSolusはオススメできないかなと思います。
リリースは保守的なローリングリリース
Solusはシステムのリリースをローリングリリースで行っています。ローリングリリースとはシステムを構成するパッケージの小さい更新が随時行われていく方式のリリースでありArch LinuxやOpenSUSE Tunbleweedなどで採用されている方式です。これに対してシステムにライフタイム(公式にサポートされる期間)を設けて期限切れ後は新バージョンにアップグレードさせたりリフレッシュインストールをさせる方式をフィックス(固定)リリースと呼びます。固定リリースはバージョンの切れ目で更新手続きが生じるデメリットがありますが、リリースに向けて計画的に開発されパッケージ間の問題などがよく調整されており、安定したシステムを提供できます。フィックスリリース方式を採用しているのがUbuntuやDebian、Fedoraなどといったディストリビューションです。
どちらも一長一短あるのですが、ローリングリリースの魅力はなんと言っても一度インストールすれば定期的に更新しながらシステムを続けることができるという点です。ただ同じローリングリリースを採用しているArch Linuxと比べると保守的な”curated rolling release”(厳選されたローリングリリース)であり毎週金曜日に安定版リポジトリへの同期が行われシステムを破壊しかねない更新を避ける傾向にあります[*1]。そのためローリングリリースの便利さとシステムの安定性というバランスをとった選択をしたと言えると思います。
ソフトウェアの管理
創設者のIkey DohertyはDebianプロジェクトのAPTやFedora等のRPMパッケージに強い不満を持っており、ユーザーがパッケージマネージャと対話しなくても良いシステムという方向性を示唆していました。Solusにとってパッケージマネージャは開発者にとってのビルドツールであってユーザーにとってはシステムから気づかれないように除去することがゴールと語っていました[*2]。しかしながら、現在ではまだそこまでは至っていないようです。
eopkgコマンドで管理
パッケージ管理はeopkg(Evolve OS Package)で管理していてDebian/Ubuntu系のAPTやRPM系のDNFなどと同じ感覚で使うことができます。APT同様にシステムの更新もこのeopkgコマンドで行うことができます。しかし、コマンドに慣れていない方にはちょっとハードルが高いかも知れません。
ソフトウェアセンターにおまかせ
もしコマンド操作に不安のある方も問題ありません。GUIでのパッケージ管理も容易にできるようソフトウェアセンターがあります。多くのディストリビューションでソフトウェアセンターは当たり前になっているので、特段目新しいものはないですがコマンドライン操作を苦手に感じるユーザーにはありがたいツールだと思います。
Google ChromeやSpotify, Slack等の人気のサードパーティ製のソフトウェアもソフトウェアセンターから簡単にインストールできます。
ソフトウェアセンター
インストール直後からFlatpakとSnapが使える
FlatpakとSnapはそれぞれクロスプラットフォームのソフトウェアを管理する仕組みであり、システムのパッケージからは切り離された仮想環境で動作するようにできています。Solusでは公式リポジトリとは別にFlatpakやSnapからアプリケーションを取り込み使用することを想定してインストール直後からこれらの機能が使えるようになっています。
デスクトップ環境は4種類
Solusのデスクトップ環境(DE)といえばSolusプロジェクトから生まれたBudgieが代表的ですが、その他にもGNOMEやKDE Plasma, Xfce(ベータ版)を選択することができます。Budgie自体は現在では他のディストリビューションからでも利用出来るため、Solusならではという特別感はないですが、やはり発祥元ということもあり筆者としてはBudgieを使うことをオススメします。
BudgieはMATEやXfceとも異なる統一感のある使い心地を提供してくれるデスクトップ環境です。elementaryOSのDEであるPantheonほど自己主張が過ぎず、筆者としては落ち着いていてとても使いやすいデスクトップ環境だと思っています。画面右からスライドで出てくるRavenというウィジェット画面がMacOSを彷彿とさせます。
通知やアプレットが表示されるRaven
設定はコントロールセンターで簡単
Linuxというと設定は英語と式がひたすら並んだ設定ファイルをひたすらいじって…と思っている方もまだいるかも知れませんが、最近のデスクトップ用途Linuxディストリビューションでは一般的な項目については設定画面で設定可能です。Solusも例外ではなくコントロールセンターでシステムに関わる多くの設定を完結できます。また、デスクトップ環境をBudgieにしている場合はBdgie用のデスクトップの外観に特化した設定アプリケーションも付属しており見た目のカスタマイズも手間なく行うことができます。
コントロールセンター
初心者から開発者まで日常的に使えるディストロ
SolusはとてもLinuxを初めて触る人にもある程度使い慣れた方、あるいは開発者にも心地よいデスクトップ環境と手間のかからない使い勝手を提供してくれると思います。もちろんArch Linuxのような最小環境から自分の好みにカスタマイズする魅力とはほど遠いですが、日本語環境の除けばUbuntuやLinux Mintにも匹敵する心地よさかなと感じています。当ブログにインストールの記事も載せました。ぜひ使ってみて下さい。
最後に
駆け足となってしまいましたがSolusの魅力を伝えられれば幸いです。インストールはとても簡単なのでぜひ気軽にダウンロードして使ってみてほしいなと思いました。微力ながらこの記事を読んだ方がLinuxに触れるきっかけになればと思います。
参考資料: