Linuxを日常的に使う実験ブログ

UbuntuでLinuxに慣れた中級者にオススメする次のLinuxディストリビューション4選

 2024-10-10

 Linux全般

今回はUbuntuやOpenSUSE, Fedoraなどのオールインワンな環境でLinuxに入門して、けっこうシステムに慣れてきて他のディストリビューションも触ってみたいという方に向けて書いてみたいと思います。

本記事の対象者

まず本記事がどのような方を対象にしているのかですが、普段使いのデスクトップ用途でUbuntuやLinux Mintのような比較的初心者の方が親しみやすいLinuxを使ってみて、もう少し導入のハードルが高い別のディストリビューションも触ってみたいな、と考えている方向けに書きました。

よって業務でRedHat系のサーバーを触ることになり、その勉強のために期待して本記事に辿り着いた方にとっては少し期待外れになってしまうと思います。そのような方はRHELやAlma Linux, Rocky Linuxにサーバーを構築して勉強するのが良いと思います。

尚、誤解のないように申し添えておきますと、例として挙げたUbuntu, Linux Mint, Fedora, OpenSUSEこれらのディストリビューションは決っして初心者向けに作られたものではありません。幅広いユーザーに受け入れられるため親切なUIや自動で設定を行なってくれるインストーラなどが搭載され、インストール直後から使いやすい環境が整っていますが、プロフェッショナルな方も使用するディストリビューションであることに変りはありません。導入の難易度が高いディストリビューションの方が格が上などという話では全くないので誤解なきようお願い致します。

派生ディスロの源流を触ってみるのが一番

Linuxには多くのディストリビューションがありますが各派生ディストロの源流を辿ると、それ程数が多い訳ではありません。ベースとなるディスリビューションにカスタマイズを加えて派生を生み出しているので、一番の特徴は元祖にあります。そこで自分の好みで選択できる場合には各派生の元祖となるディストリビューションを触ってみると特徴を掴みやすいと思います。

元祖ディストロは使い易いインストーラーや便利な独自ツールはないことが多いですが、ベーシックな仕組みや設定などを学ぶことができます。UbuntuやOpenSUSE, Linux Mint等のインストールしたらすぐに使うことができるシステムでLinuxを体験し一通り慣れ親しんだ方には是非、各源流となったディストリビューションに触れてみて欲しいと思います。

Arch Linux

公式HP

項目説明
パッケージ管理pacman
init/サービス管理Systemd
インストール手動
日本語化手動設定が必要
デスクトップ環境GNOME, KDEなど多数のパッケージより選択可能

言わずと知れた超有名ディストリビューションの一つであるArch Linuxです。GUIのインストーラーがないことから導入を躊躇うユーザーさんもいるかと思います。たしかに全くLinuxの経験やコマンドライン操作をしたことが無い方が突然インストールしろと言われたら驚いてしまうかも知れません。しかし、ある程度コマンド操作に慣れた方でしたらインストールガイドを見ながらゆっくり行っていけば、決して難しい操作ではありません。インストール作業を通じてシステムにも少し詳しくなれます。

一度インストールしてしまえばローリングリリースのためシステムを更新するだけで常に最新のシステムを使い続けることができるのでUbuntuのようなバージョンリリース方式のディストリビューションのように大規模なシステム更新や再インストールが不要になりOSのバージョンを気にすることから開放されます。

一方でローリングリリース故に公式のリリース情報をチェックせず漫然とアップデートしているとエラーが出たりマニュアル操作でシステムを編集するなどの作業が発生するなど手間がかかる部分もあります。

これまでデスクトップ環境込みのオールインワンの状態でインストールをしてLinuxを使ってきた方にとって最小環境のインストールを行い自分の好みでデスクトップ環境を構築したり好みのネットワーク接続ユーティリティを導入したりと、DIYのようにゼロベースからシステムを作りあげていく体験が出来るのはとても楽しい経験です。

Archの強みは何と言ってもArchWikiの存在です。親切丁寧なGUIを用意しなくても詳細なドキュメントを作成することがユーザーフレンドリーを実現する手段なんだということを証明してくれたディストリビューションでもあります。最小環境から構築出来るカスタマイズ性の高さとpacmanによるバイナリパッケージ管理のスマートさから多くの派生ディストリビューションを生み出しました。

Arch Linux


Gentoo Linux

公式HP

項目説明
パッケージ管理potage
init/サービス管理OpenRCが標準、他も選択可
インストール手動
日本語化手動設定が必要
デスクトップ環境GNOME, KDEなど多数のパッケージより選択可能

Linuxを使い始めた方が一度は憧れるディストリビューションではないでしょうか。Gentoo Linuxの名はジェンツーペンギンという高速で泳ぐペンギンの名前に由来しますが、その名のとおりソースからビルドすることでマシンと目的に応じた最適なバイナリを作ることが出来ます。ソースコードベースのパッケージ管理を「自前ビルド主義」などと揶揄する声もあるようですが、自前でソースコードをビルドするという特徴から非常に高い適応性と移植性を実現しています。

今回紹介した中ではインストール作業が最も難しいと思います。それはLinuxカーネルのビルド作業があるためです。お使いのマシンの構成やハードウェア情報をよく知っていないとOSが起動できなかったり、使いたい機能を使えなかったりしてしまいます。実際はそれほど難解な作業ではないのですが、初心者には詰りやすいポイントかと思います。

Portage, EmargeをはじめとするGentoo独自のツール群とビルドの仕方を管理する要のUSEフラグという概念があります。USEフラグによりユーザーは無駄のない自分のシステムに最適なバイナリを構築することが出来ます。Gentooは独自のパッケージ管理故に独特な概念を理解する必要があり、慣れるまでには少し時間が掛るかも知れません。

GentooはよくArchと比較されます。どちらも手動インストール、公式ドキュメントの充実、最小環境からのカスタマイズ性という特徴を持っているためと思われますが、両者は設計思想が異ると考えています。Archがシンプルかつ先進的であるコアシステムを提供することでユーザーにカスタマイズ性を与えようとするのに対してGentooは変幻自在のビルドシステムを搭載することで、どんなニーズにも応え得るカスタマイズ性を提供しようとしているように思えます。例えば、init/サービス管理に関して見てみると、ArchはSystemdのみをサポートしていますが、Gentooでは標準のOpenRCの他に複数のinitの中から選択できるようになっています。

パッケージの数に関してはかなり豊富で、公式リポジトリがサポートしていないパッケージもOverlayという仕組みによりユーザーから提供されています。

実際使ってみての感想ですが、正直に言うとGUIがあるビルドに時間のかかるアプリケーションが多いシステムではOS更新の度に一晩中マシンを稼動させないといけない状態になってしまいます。たしかにFirefoxのようなビルドに膨大な時間の掛るパッケージは例外的にバイナリが用意されているのですが、それでもマシンへの負荷とビルドに掛る時間を考えるとサーバー用途か最低限のGUIを搭載したシステムでないと運用は難しいのではないかと思います。

もしGentooの導入に迷ってしまう場合はバイナリパッケージにも対応したSabayonのようなGentoo系のディストリビューションで慣れてからでも良いかなと思います。余談ですがGoogleが開発しているChromeOS現在はGentooをベースにしています。

Gentoo Linux


Slackware

公式HP

項目説明
パッケージ管理slackpkg/pkgtool
init/サービス管理BSDスタイルのinit
インストールTUIインストーラ
日本語化15.0ではfcitx導入済み
デスクトップ環境複数のパッケージより選択可能

こちらも言わずと知れたLinuxディストリビューション古参のSlackwareです。あまり現代的ではないインストーラやソースコードからビルドするパッケージ管理の逸話などの影響もあり古臭いディストリビューションのイメージをお持ちの方も多いかも知れません。しかしバージョンアップを重ね便利なツールも取り入れながら保守的ながらも現代的な構成へと変貌を遂げています。

Slackwareと聞くとソースからビルドしてパッケージを作成しないといけないのでパッケージ管理が面倒というイメージを持っている方も多いかも知れません。実はこの認識は実態とは少しかけ離れています。公式リポジトリにあるパッケージに関してはslackpkg(12.2より採用)というツールによって大幅に管理が便利になりましたし、公式リポジトリに存在しないパッケージもコミュニティが有志で作っているリポジトリがあります。SlackBuilds.orgをはじめとするユーザーによるリポジトリには有志が作った膨大なビルドスクリプトがストックされています。公式にないパッケージはまずユーザーリポジトリを探してみましょう。また、自作パッケージを作りたくなった際も、ソースからビルドしたものをtarでアーカイブしlzmaで圧縮しただけのシンプルなSlackwareパッケージは作るのが非常に容易なので、Linux From Scrachにあるビルド方法の知識を流用することも容易です。

わりと伝統的かつシンプルな管理方法を好む傾向にあり、init/サービス管理には現代的なSystemdやOpenRCなどを採用せず、従来よりBSDスタイルの起動スクリプトを列挙するタイプを採用しています。極力シンプルな構成にすることでユーザーが自らの責任でシステムとパッケージの管理を行える許容幅を保ちながら現代的なツールも用意しているバランス感覚があるディストリビューションです。現存する多くのディストリビューションはユーザーに独自のルールや制約を押しつけることで成立させている部分があります。Slackwareはその中でも最も制約が緩いディストリビューションではないかと思います。その緩さ故にユーザーが真に自由にシステムを管理できるように設計されています。Slackwareの「Slack」とは「緩い」を意味する単語であり、まさに名が体を表わしていると言えると思います。

現在のSlackwareのバージョンは15.0ですが、ユーザーの間ではメジャーアップデートの更新期間が長いこともありSlackware-currentを導入してローリングリリースのシステムとして適宜更新しながら使用していく方が多いようです。

Slackware


Void Linux

公式HP

項目説明
パッケージ管理XBPS
init/サービス管理runit
インストール手動/TUIインストーラ
日本語化手動設定が必要
デスクトップ環境GNOME, KDEなど多数のパッケージより選択可能

Void Linuxはスクラッチで開発された比較的新しい独立系のディストリビューションです。パッケージマネージャーのXBPS(X Binary Package System)を核にinit/サービス管理にrunitを採用するなど、メジャーなディストリビューションとは一味違った使い心地を味わうことが出来ます。

インストール作業はTUIインストーラによる作業か手動かを選ぶことができます。手動の場合はArch Linuxと似たような作業で進めることが出来ます。TUIインストーラを用いた場合は質問に答えていくとインストールが完了します。但し作業は全て英語で行うことになります。

ローリングリリース、バイナリパッケージ管理、最小環境からの構築ということもありArchと使い勝手は非常に似ています。AURのような半公式のユーザーリポジトリはないものの、公式リポジトリに多くの実用的なパッケージがあり基本的に困ることは少ないと思います。ArchではAURに存在するパッケージも公式パッケージにあったりします。

難点はネット上に情報が少ないことです。ArchやGentooなどに比べると圧倒的に少ないです。基本的に頼りになるのは公式ドキュメントと時々見つかる海外掲示板でのやりとりぐらいです。筆者が現在使用しているのがVoid Linuxということもありインストールや環境構築に関することは本ブログでも扱っていますので参考になさって下さい。Linux界の百科事典とも云われるArchWikiに助けられることもよくあります。

Void Linux

まとめ

色々なディストリビューションを触ってみるのが大好きな筆者としては、ぜひ多くのディストリビューションに実際に触れて、その違いや設計思想を実感して欲しいと思っています。正直なところUbuntuを使っただけでLinuxを知った気になってしまうのは非常に勿体無いと思います。本記事が皆様の楽しいLinuxライフに貢献できれば幸いです。