Linuxを日常的に使う実験ブログ

Linuxで使えるギターアンプシュミレーターGuitarixを試してみた

 2024-09-15

 Linux全般
DTM

Linuxでもギターアンプシミュレーターを使いたい

皆さんLinuxライフを楽しんでいますか?筆者は最近エレキギターを始めまして、LinuxにてDTMを少しかじりながら、ギターの練習もLinux上で動くアンプシュミレーターで行えれば良いのになと考えていました。調べてみますとGuitarixなるスタンドアロンで動作するギターアンプシミュレーターがあるという事で早速使ってみました。ギターのことは語れることが殆どないので、殆どコンピュータの話題です。

Guitarixとは

GuitarixはLinuxやUnixなどで動作するオープンソースのギターアンプシミュレータです。Guitarixを使うことでアンプを持っていなくても、コンピュータとギターをオーディオインターフェースで接続することでアンプに接続したような様々な音を出すことができます。GuitarixはJack Audio Connection Kit(以下、Jack)というオーディオサーバー向けに設計されているので、Linux上でJackを起動し使う必要がありますが、PipeWireを使用している場合はJackが入っていなくても動作します。詳しくは以下の項目で述べていきます。

もしアンプやマルチエフェクターを買おうか迷うっている方はオーディオインターフェースとLinux入のPCを繋いでGuitarixでギターを弾くという選択肢もありますよ。Guitarixを使用したデモ演奏の音声や動画は公式サイトで見ることができます。

Guitarixの操作画面 guitarix

Guitarixのインストール

まずはお使いのLinuxにGuitarixをインストールしましょう。筆者はVoid Linuxを使用していますので公式リポジトリを利用してXBPSでインストールしました。

sudo xbps-install guitarix2

参考までにArch LinuxとUbuntuでのインストールコマンドを記しておきます。Guitarixは多くのディストリビューションで配布されていますので、まずは公式リポジトリで配布しているかを確認してみてください。以下のコマンドはいずれも管理者権限で実行してください。

Arch Linuxの場合

pacman -S guitarix

Ubuntuの場合

apt install guitarix

オーディオ環境の準備: Jack or PipeWire

エレキギターを嗜んでいる方には当たり前の話ですが、PCとギターをつなぐためにはオーディオインターフェースが必要です。筆者は10年以上前に何故か購入したRolandのUA-25 EXを持っていましたので、これでギターとPCを接続しました。随分古くて心配しましたがまだ使えました。まずはオーディオインターフェースを介してギターとPCを接続します。

GuitarixはJack環境下で使う前提のアプリケーションなのですが、PipeWireを導入すればJack用のアプリケーションも動かすことができます。ここではJackとPipeWire両方について見ていきたいと思います。Guitarixを使用するだけであればJackでもPipeWireでも問題ないのですが、PipeWireの場合はYoutubeや他の音源を流しながらギターを弾くこともとても簡単なのでPipeWire環境下でGuitarixを使う方が使い勝手が良いかなと思います。

Jackを使用する場合

まずはJackの導入が必要です。多くのディストリビューションではqjackctlパッケージを導入すると自動で依存を解決してJackも自動で導入してくれます。ここでは本題から逸れますのでjackの導入については深堀しません。多くのディストリビューションが公式にサポートしているので調べてみてください。

jackを導入後はqjackctlを起動して「開始」ボタンを押してJackサーバーをスタートさせます。Jack起動の後でGuitarixを起動します。この順番は大事なので間違えないようにしてください。

Jackを使用する場合はQjackctlのグラフ表示でオーディオインターフェースとGuitarixとPCの出力を接続してください。

Jackでの接続例 Jack connection

PipeWireを使用する場合

システムのオーディオサーバーにPipeWireを導入している場合はJackは必ずしも必要ではありません。Ubuntu, Arch Linuxユーザーはpipewire-jackパッケージを、Void Linuxユーザーはlibjack-pipewireパッケージを導入してください。これでpw-jackコマンドが使用可能になります。このコマンドを使ってGuitarixを起動します。

pw-jack guitarix &

PipeWireの導入に関してはVoid LinuxのオーディオサーバーをPulseAudioからPireWireに切り替えてみたが参考になるかも知れません。

Guitarixが起動したらオーディオインターフェースとGuitarixとPCの出力を接続します。接続にはQgraphを使用しました。

PipeWireでの接続例 PipeWire connection

音声の遅延への対策

Guitarixの設定によってはギターを弾いたタイミングと出力されるタイミングに遅延が生じるかも知れません。音を鳴らしてみて遅延が気になるようでしたら、この項目を参考にしてみてください。筆者もGuitarixのデフォルトの設定では遅延が少し気になりましたので、設定を変更しました。設定はJackとPipeWireで異なるので注意が必要です。

Jackの場合

Guitarixのメニューバーから”Engine” -> “Latency”を選択し、“128”に設定します。

setting latency

PipeWireの場合

pw-jackコマンドで起動する際にPIPEWIRE_LAYTENCY変数を”128/48000”に指定して起動します。具体的には以下のコマンドになります。

PIPEWIRE_LATENCY="128/48000" pw-jack guitarix &

音を鳴らしてみる

ようやく準備が整いました。音を出してみます。まずは初期設定にあるプリセットを適当に選んで音を出してみましょう。Guitarixでは機材を組み合わせて自由に音を作ることができます。基本的には信号は上から下に流れるので、その流れに沿ってエフェクター等の機材を組み合わせていきます。Guitarixにはプリセットの管理機能があり、musical-artifacts.comに登録されている様々なプリセットをダウンロードして使用することが可能です。まずはプリセットで音を鳴らしてみましょう。プリセットの構成を基に自分でカスタマイズしてもいいですね。

ビルトインのモジュールを組み合わせて音作り

Guitarixにはビルトインのモジュールが多数用意されていて、これらを組み合わせて自分の音作りができます。各モジュールは「プール」画面にリスト化されており、このリストから「ラック」に配置するだけで使用可能になります。各モジュールの電源スイッチをONにすれば有効化します。不要になったモジュールは両脇にあるハンドルの部分を掴んでプール部分に戻せばラックから削除できます。あとはパラメータを自由に操作して満足いくまで音作りを楽しんでください。

LADSPA, LV2形式のプラグインにも対応

多くのエフェクター等のビルトインのモジュールが予め用意されたGuitarixですが、より多くのモジュールを使いたい場合はプラグインを導入することができます。プラグインの形式はLADSPAとLV2(LADSPA Version 2)の2つです。WindowsのDAWでメジャーなVSTには対応していません。

DAWとの接続

Guitarixで鳴らしたギターの音をArdourなどのDAWに取り込んで録音したいというのはDTMを行う人にとっては当然の欲求だと思います。Guitarixで鳴らした音をDAWで録音するのは非常に簡単です。JackまたはPipeWire上でGuitarixの出力をDAWの入力に接続するだけでDAW側でGuitarixの音声を使用することができます。Jackの場合はQjackctlのグラフ機能で、PipeWireの場合はQgraphなどのGUIで接続するのが楽で良いと思います。またArdourなどのDAW側から接続できる場合もあります。 

Qgraph上でGuitarixとArdourを接続しているところ

Guitarix and Ardour

GuitarixはDAWのプラグインとしても利用可能

GuitarixとDAWのもう一つの連携としてGuitarixに同梱されているLADSPA, LV2のプラグインを使用する方法があります。DAW側からプラグインとしてGuitarixを使用することでGuitarixを起動する必要はなくなります。

Guitarixを使ってみた感想

ギター歴がまだ数ヶ月であり、練習はマルチエフェクターにギターとヘッドホンをつないで練習するぐらいなのですが、正直、Guitarixだけでも練習するには十分な環境が用意できるかなという感想です。Guitarixの出力をDAWや録音ソフトに接続すれば手軽に録音できますし、PipeWire環境下で使えばYoutubeなどで曲を流しながら練習するのも手軽にできます。チューナー、メトロノーム、ドラム機能、録音機能もついているので日頃の練習に必要なものはまるっと入っています。ギターを繋げばすぐに練習出来る環境をPC上に整えられるというのはなかなか素晴らしいと思います。

心配していた音声処理による遅延ですが、適切に設定することでPCとスピーカーもしくはヘッドフォンを有線で繋いだ場合はほぼ遅延を感じず演奏できました。ただPCとヘッドホンの接続がbluetoothの場合は遅延時間が大きく演奏に支障をきたしました。この辺はもう少し試してより演奏しやすい環境を探っていきたいと思います。

筆者はPCを起動している時間が結構長いのでオーディオインターフェースとギターを繋げばすぐに練習できるというのは非常にメリットだと感じています。しかし普段アンプに直接ギターを繋いで練習している方からすれば、わざわざPCを起動しないとギターが弾けないというのはデメリットに感じるかも知れないと思いました。

あまり期待しないで探し始めたギター用アンプシュミレーターですが、予想以上に高クオリティのものに出会えて個人的には大満足です。暫くはGuitarixを使ってギターの練習をしようと思っています。

まとめ

Linuxで使える仮想ギターアンプシミュレーターGuitarixをレビューしてみました。重いDAWを立ち上げることなくすぐに使えるギターアンプシュミレーターです。Linux使いでギタリストという方は是非使ってみてはいかがでしょうか?この記事が皆さんのLinuxライフを楽しいものにできれば幸いです。